2014年12月8日月曜日

長崎名物、卓袱料理

「ドーミーイン長崎」にて
 朝食ブッフェ
「ビジネスホテル価格だけれど大浴場がある」「ベッドの横に小さな畳スペースがついている部屋もある(今回はそういう部屋じゃなかったけど)」ということで、我が家のお気に入りチェーン宿「ドーミーイン」、ビュッフェ朝食が凝っているのも魅力の一つ。
 
ご当地料理が数品含まれているのが常ということで、長崎のこの宿は「ミニサイズ皿うどん」「回転大皿卓袱風」「ハトシ」「中華粥」の用意があったりした。おお、お総菜が卓袱料理風に盛られておる……と愉快な気分になる私。中華粥は、ホテルのすぐ近くに中華街があるからかなー、と。
 
「ハトシ」は「蝦多士」、海老すり身をパンで挟んで揚げたもの。皿うどんは、3口分ほどの麺が小皿に盛られた状態で並んでいて、セルフであんをかけるようになっていた。やっぱりこれをいただくよね、と、今朝は皿うどんと中華粥を中心に、長崎さつま揚げ、温泉卵、海老蒸し焼売などをもぐもぐ。デザートになぜか杏仁豆腐までもぐもぐ。朝からしっかりいただいてしまった。
今日のメインイベントは、午前中の「軍艦島上陸クルーズ」!……なんだけど、今日は朝からけっこうな雨。
 
スマホから確認すると、午後にはすっかり晴れるみたい。軍艦島上陸時には多少小雨になるかなー……という予想で、「うん、だいじょぶだいじょぶ、上陸する頃には土砂降りじゃなくなるよ!」と楽天的な私たち。
 
ホテルで傘が借りられたのでそれを持ち、路面電車の1日券を買って、長崎港を目指した。
 
クルーズ船は、数台の観光バスがそれに合わせてやってきて、けっこうな混雑。早めに到着していた私たちは客室内の左側窓際の席に座ることができたけれど、2階デッキが雨で使えないこともあって客室はぎゅうぎゅう詰め。室外の吹き抜けの席に座ってもなお席が足らず、通路に板を渡してお客を座らせるまでに。「のどか」とは言いがたい状況で、船は軍艦島に向けて出発した。
 
……が、途中から海はかなりな荒れ模様。雨はだんだん弱まってきているものの、波の高さは絶好調で、横からの波が客室の窓にまでかかるほど。「どっかの南の島のマングローブツアーだかの帰りに、こんな感じになったことあったよなー」と、この手の船はけっこう平気な私(だんなと息子も乗り物酔いには強いタイプ)はのほほんとしていたけれど、年配客が多いツアーバス客あたりが次々とグロッキー状態に。
 
軍艦島に辿り着く前に、「こんな状況は慣れてます」という風に、船スタッフがてきぱきと
「ドア開けて換気しますね!」
「ご気分悪い方は上着脱いで!暑いと余計具合悪くなります!脱いだ上着は首に巻くと良いです!」
「後ろの手洗いで吐かないでくださーい!詰まりまーす!」
「エチケット袋欲しい方は!他にいらっしゃいませんか!」
と、なかなかに阿鼻叫喚な状況。
 
これで上陸できればまだ良かったのだけど、軍艦島まで近づいて船着き場にロープを投げて、なんとか接岸を……と試みたところ、1m以上の幅で大きく上下に揺れる船。横にも揺さぶられて、船の左脇腹をしこたま岸壁にこすって「ガリッ!」とイヤな音がしたところで、これはダメだと船長判断で
「上陸は断念せざるを得なくなりました」
ということに……。
 
後にこちらのサイトで見たところによると、
 
軍艦島上陸に関しては、天候と安全基準を満たさないと上陸が出来ません。
天候基準をクリアする日数が年間100 日と想定されています。
 
桟橋の利用を禁止する場合の基準
1. 風速が秒速5 メートルを超えるとき
2. 波高が0.5 メートルを超えるとき
3. 視程が500 メートル以下のとき
※上記範囲内においても、見学者が安全に下船できないと船長が判断するときは、桟橋を利用しないものとする。
 
という感じらしく、「そりゃ無理ですわー」という感じ。明らかにこの時、波高は「0.5 メートル」どころじゃなく、その3倍はゆうにあったかなと思う。軍艦島上陸は、なかなか難易度が高いイベントであるらしかった。
 
そんなこんなで、軍艦島全景を眺められる場所に船を止めての船上からの見学……ということに。一時的に2階デッキに出られる配慮をしてくれたものの、客室はぎゅうぎゅうで窓際の席から出ることは断念せざるを得ない状況で、雨と波の水滴がついた窓にへばりついて「見える!見える、けどー!」という感じでの見学になったのだった。幸い、船左側を島側に向けて長いこといてくれたので、たっぷり眺めることはできたけど、内側に座ったお客さんは、「ただ揺れる船に乗って3時間気分悪くなっただけ」という感じになったではないかなと。
 
船はますます揺れて、阿鼻叫喚度も増す一方。長崎港に戻る前に最寄りの「高島」で30分ばかり停泊(石炭資料館でガイド案内があったそうだけど、私たちはめんどくさくて船の近くですぐ戻れるように待機してた)したところ、お客さんの半数ほどが顔色悪くゾンビのようになっていた。
 
「よく、こんな感じに荒れるんですか」
とその際に船にスタッフに聞いたら
「いやいや、もーっとすごい日がいっぱいあるよー」
だそうで。
 
軍艦島の暮らしは、良いところもあり不便なところも……という感じなのはガイドの説明や船内で流れたDVDで理解できたけど、想像以上に「孤島」になる状況も多々あったんだろうなと思った。こんな荒れる海の中で暮らすって、どんな感じだったんだろ。
長崎「富貴楼」にて
 ミニ卓子料理 \6480
 瓶ビール
……で、12時半頃に解散になって、そこから路面電車に乗って目指すは老舗料亭「富貴楼」。
 
長崎の伝統料理「卓袱(しっぽく)料理」がいただける料亭。宴会料理のスタイルなので、2人用、3人用といった少人数用の用意はしてくれないお店が多く、多くが「4名様から」といった感じ。
 
このお店は午後からの通し営業で、3人用の卓袱料理(特に昼は「ミニ卓子」というそこそこ手軽な内容で支度してくれる)もあるとあり、しかも創業明暦元年、店名は時の内閣総理大臣、伊藤博文が来店の折に名付けたものという有形文化財の建物を有するお店。これだ!という感じで予約しておいた。
 
なんとも雰囲気のある、天井低め、階段急な昔の建物。高台にある座敷からの眺めも良く、そこに次々大皿が並べられた。でも、給仕から「おひれをどうぞ」と吸い物を勧められるまでは他のものは口にしてはいけないというしきたり。
 
おひれ(お鰭)は、鯛に羽二重餅、椎茸、青菜などが入った、「ミニ雑煮のようなもの」とのこと。
「"当店の味"はこんな感じです」という紹介もあり、「お酒の前にこれをお腹に入れて酔いすぎないように」という気遣いもあり、「お客様一人に魚一匹使いましたという熱烈歓迎」の意もあるそうで。
 
あ、おだし美味しい……とゆるゆる啜っていたら、
「おひれを食べないとビールもあげません」
と言われて笑ってしまった。「おひれ」を全部平らげるまでは、本当に他のものを口にしてはいけないんですって。
 
で、テーブルに並んでいるのは4つのお皿。「前菜」にあたる冷菜たちで、鰹のお刺身、フカの湯引き(もみじおろし&ポン酢で)、焼きカマス、鶏肝しんじょ、カステラ(甘くはない、固いはんぺん的なもの)、海くらげ山くらげの和え物。
 
「ミニ卓袱」ということでボリュームは若干軽めで、続く温かい皿は「蓮根餅・海老しんじょ・海老・いんげん・もみじ麩」のくずあんかけ、更に「東坡肉と焼きししとう」、そして「御飯とおぼろ豆腐」。最後は「洋梨の赤ワイン煮」「梅椀」。梅椀は、桜の花の塩漬けと紅白のお餅が入ったこしあん汁粉。
 
「……つまり、雑煮で始まって汁粉で終わる、と」
「餅好きか!」
という感じの卓袱料理なのだった。
 
おだしの味も良かったし、こっくり煮られた東坡肉もなかなかの美味。でも、蓮根餅の入った鉢が一番美しかったし好みな味だったなー。おぼろ豆腐をざくざくかけつついただく御飯も、ついついお代わり。
 
料理の出てくるタイミングはけっこう早くて(最初の皿、お腹空いていたものだからとっとと皆で食べてしまって「あら、お早い!」と驚かれたので、配膳のスピードを上げてくれたのだと思う)、さほど時間がかからず、スムーズにいただけた昼御飯。
 
その後の予定は特に考えていなかったので、「どうしよ」「長崎らしいところ……でもすごく時間があるってわけじゃないし」と、この界隈で行けそうなところを訪れてみようということで、「諏訪神社」詣でからの「亀山社中記念館」からの「出島」。
 
これという予備知識もなく歩き回り、「坂本龍馬は当時にしてはかなり背が高かった(173cm)」とか「"雰囲気イケメン"だったっぽい」とかそんなことを知ってみたり。1時半から昼御飯、5時に夕御飯という無理めなスケジュールだったにも関わらず(6時過ぎには空港に向かう必要があったから、5時以降なら空港で夕飯にしなきゃいけなかった)、これでもかと歩いたので案外空腹になってしまったのだった。結果的にめでたしめでたし。
長崎中華街「江山楼」
 上ちゃんぽん \1000
長崎土産、中華街で「麻花兒」を買わなければ!ということで人気店「蘇州林」で買うべく中華街へ。
 
横浜中華街を想像すると、その1/10ほどの規模しかない、とても可愛い中華街。製麺屋さんで常温保存可能なちゃんぽん麺も買って、時間ありそうだねと夕飯は「江山楼」で。
 
「かた焼きそばじゃなく、ちゃんぽん麺の皿うどんが食べたいんだよー」
とだんなが言っていて、この店にはまさにそれ(皿うどん(太)というのがそれだそうで)があったので、これ幸いと入ってみた。元々「ちゃんぽんが美味しいお店」とチェックしていた数店の一つでもあったし。
 
ちゃんぽんは「ちゃんぽん」「上ちゃんぽん」「特上ちゃんぽん」の3種類。特上はボリュームもすごそうだし、ふかひれも乗ってるし(別にふかひれは要らない……)、そこまですごいものでなくてもと、肉団子が乗って魚介もたっぷりな風の「上ちゃんぽん」にしてみた。ちゃんぽん麺やちゃんぽんスープにはいまいち興味のない息子は炒飯で。
 
このちゃんぽん、スープがびっくりするほど美味しかった。見事に白濁したスープはとろりと粘度もあって、とんこつラーメンのスープのような濃厚さ。でも脂っこくなく肉と魚と野菜の上品なだしの味だった。「ちゃんぽんのスープって、化学調味料味がするのは仕方がない」くらいに思っていた(リンガーハットの味が私にとって「フツーのちゃんぽんの味の基本」だったから……)から、「わ!めっちゃ美味しい!」と、びっくり。
 
キャベツたっぷり肉も魚介もたっぷり、紅白の独特な長崎かまぼこも入り、なんというか「これぞちゃんぽん」という感じのちゃんぽんだった。最後の最後に美味しい本場のちゃんぽんが食べられて大満足。交換して食べた、だんなの、ちゃんぽん麺を使った「炒め皿うどん」もまた違った風で美味しかった。
 
空港行きのバスにもすんなり乗れて、夜の飛行機で羽田に帰還。
初めての中津や別府温泉、私は二度目(最初は母とのツアー旅行だったからあんまり記憶にない)の長崎、どこも楽しかったし、「やっぱり由布院温泉にもいってみなきゃ」「俺は豊後の転車台が見たい」「あとあれだ、今度こそ軍艦島上陸」と、次回の宿題が沢山。また行こう。